[漫画] 天使のわすれもの『大空の侵略者』のネームシナリオです。シナリオのためセリフと状況説明のみです。小説ではありませんので、基本的に実際のシーンで描かれる描写のみを記載しています。
ペン入れ前にはネーム(下描き)を公開する予定です。このブログでは現在描いている漫画やイラストの制作過程をできる限り公開していきます。
※この原稿は第二校で修正途中です、初校はこちらです 。
表記ルール
- ナレーションは四角囲みに入る文
- 「 」はふきだしに入る文
- 冒頭に三文字分の空白のある行は状況説明、ト書き文
- ( )は補足
- 設定資料はこちら→
目次
第1幕「大空」
[襲来]
ナレーション「遥か遠い時代、人は空に住み、」
「そして、闘っていた。」
翼を広げ大空をかなりのスピードで飛翔する天使。
その背後に、巨大な羽を持つ魚のような怪物が迫る。
その大きさは 24、5メートル、小型船舶級だ。
大きく開かれた口からぞろり剥き出した歯と、
飛び散る唾液のような液体がなんとも悍ましい。
天使は強力な弓で武装しており、怪物の突撃を蛇行し回避しながら、反撃を繰り返している。
(天使の名はガイアナ、通称『ガチギレ』)
(迫りくる巨大な魚のような生き物は翔尾『トビヲ』)
(この時代の空には、天使とそれを喰うトビヲがいる)
ガチギレが焦りながら叫ぶ
ガチギレ「なぜ、こんなに・・・、」
「都市の近くに大きな、トビヲがっ!」
周囲にはまだ見えないが街が近いのだろう。
巨大な羽を持つ魚のような怪物、天使はそれをトビヲと呼んだ。
トビヲの体表面には、無数の小さい異形の者たちが這い回る、彼らは近づく者に容赦なく飛びかかる。
小さいとはいってもガチギレと同じくらいのサイズはあるだろう、彼らが小さく見えるほどトビヲが巨大なのだ。
ガチギレは素早く回避行動をとりながらトビヲへ矢を放ち続ける、
こんなものが街に入ったら大変なことになると応戦するも苦戦している
目深に被ったフードの切れ目から少女の鋭い目がのぞく、
顔、肩や腕の無数の傷とフードの痛み具合が、闘いの激しさを物語っている。
飛びかかってくる異形の者たちの激しい攻撃のせいで既に全身は傷だらけだ
ガチギレ「くっ・・・!」
「こいつら、数が多すぎるっ」
飛びかかってくる小さな異形の者に苛立つガチギレ。
雲に入り、視界が悪くなる
トビヲ「グォオオオアアアアアォン」
トビヲにしがみついている異形の者たち「ギャアギャアギャア」
轟音と怒号が周囲を圧倒する。
その中から叫びとも囁きともつかない不気味な声が聞こえてくる
トビヲ「テン・・・シ・・」
「クウ・・・テン・・シ・・・」
こもったような空恐ろしい声。
思考に働きかけてくるものなのか、
それとも恐怖が彼らの鳴き声をそう聞こえさせるのか
トビヲたち「ギャアギャアギャア」
「テン・・・シ・・クウ」
「・・・天使・・・喰う・・」
襲いかかる異形のものたちを振り払うのに必死な天使ガチギレ
ガチギレ「くッ!」
フッと雲を抜けた。
眼下に飛行船が見える
ガチギレ「!」
飛行船へ先ほどの大きなトビヲの1匹が今にも追いつこうとしている。
船のサイズはトビヲとほぼ同サイズだ、襲われればひとたまりもないだろう
ガチギレ「あの船・・・っ!」
(トビヲたちは飛行船を追っていた)
船は船体を傾け蛇行しながら回避行動をとっているが到底逃げきれそうにない
焦り憤るガチギレ
ガチギレ「ま、間に合わないっ」
(見開き構図:中央に襲われている船、左上部は奥にいるトビヲ、右下部に手前のトビヲ)
船を挟むように大きなトビヲが2体。
その巨大なトビヲの体表にへばりつき這い回る無数の異形のものたち。
(異形の者はトビヲの幼体だ。幼体の大きさや姿は人に似た奇怪な姿をしており、背に虫の羽のようなものが複数枚ある。足の間接は反対に曲がっている、不気味で気持ちの悪い容姿だ)
船の音「グォオオオオオン」
「オン オン オン オン」
トビヲ幼体「ギャアギャアギャア」
先ほどの怪音の一部はこいつらだ。
隣にいる仲間すら隙あらば喰い散らかし、更に周囲に喰えるものがないか、複数の目玉をギョロギョロとさせている。
『悪魔』そう言ってしまえば分かりやすい生き物
とうとうトビヲに船体を喰い破られ墜落していく船。
引き裂かれた船の間を飛ぶガチギレ。
何かを探し回るかのように船を貪るように喰い散らかすトビヲ。
怪物の群れは全体がひとつの生き物のように、黒い螺旋となって船の残骸を呑み込んでいく
トビヲ「テン・・・シ・・クウ・・・テン・・」
トビヲ幼体「ギャアギャアギャア」
声ともつかない怪音
スッ!
ガチギレが頭上のリングに手を添える
ガチギレ「遡上!!」
粉々にされる飛行船の間を飛びながら、
呪文のような言葉を叫ぶガチギレ。
ナレーション「空を守る守護分隊兵士が、刻を遡るときに発する呪文。」
「彼らは少しだけ時間を遡って対処することができるのだ。」
リングが輝きを増し周囲をつつみ込む。
真っ逆さまに飛び続けるガチギレは閃光となり流れ星のように消えた
フッ!
[商船]
ナレーション「一刻前ー、」
先ほどのシーンで墜落させられた船がのんびりと飛んでいる。
(先ほどのシーンの、少し前の時間だ)
船のデッキ(甲板)でガタイの良い顎髭の男がロッキングチェアに揺られている。
この商船の船長だ。
商いで豪華な物を扱っているため、デッキ周辺は珍品や高価な調度品で溢れている。
足元には大きなゾウガメまでがいる、
趣味人なのだろう、じゃらじゃらと衣服には貴金属がぶら下げられており、商船の船長のわりには、その身なりはどこなく海賊ちっくだ
船長「フフ、フフフフ」
顎髭を撫でながら、テーブルに並ぶ高級な酒瓶たちを眺めニヤついた笑みをみせる船長
手にはとても高価そうなグラスを持っている
グラスには高級な酒がなみなみと揺れている
そのグラスは、上部が透き通ったクリスタルで、縁に金色の輪があしらわれている。
下部には蔦が絡みつくような紋様の銀食器のような風体をしており、綺麗ではあるがどこか不気味な雰囲気が漂っている。先ほどから上部の縁の金色の輪の部分が、誘うようにヌメヌメとキラキラ光っている
船長はそれを指で撫でている
音「キューッ キューッ ・・・」
金色の輪の縁に沿って撫でると、華奢で綺麗な高音が鳴る
船長「ゴクンッ!」
グラスに入った高級な酒を、惜しげもなく一気に飲み干した
船長「クゥー!フゥウウウ・・」
よほど美味いもの、高価なものなのだろう、
小刻みに肩を振るわせて笑っている。
顔が興奮し上気している、満足気な表情だ
足元のゾウガメが退屈そうに、のっそりのっそりと歩み去っていく。
もうずいぶんと長くこの船にいるのだといった雰囲気の亀、安定感のある雰囲気でゆっくり歩み去る
船長がグラスの縁にあるリングを撫でる
音「キューッ キューッ ・・・」
そして呪文のような言葉を呟いた
船長「遡上・・・。」
ススススッ
グラスを持つ光景がブレる。
グラスが二重に見える光景、残像の様
グラスの蔦の紋様が動いて見える、まるで魔法のグラスだ。
ブレが止まると、グラスには再び酒が満たされている
ゾウガメも船長の足元にもどっている
船長「フフ、フフフフ」
船長のニヤついた笑みに一人の船員が気づき寄ってくる
船員A「なんなんすか、嬉しそうに」
船員Aは船長がニヤついている理由が知りたくてたまらないといった感じだ。
「何か得になることはないか」いっつもそんなことを考えているタイプだ
船長「おまえ、その質問4度目」
船員A「はぁ・・・? お、おいらは今聞いたばかりですぜ?」
船長「フフフフ・・
これだよ、これ。
すまんな」
船長は自慢気にグラスを船員に見せながら
船長「さっきの港で、手に入れた、」
ほろ酔いで顔が赤い。
(構図:手前に船長。背景に先の港での光景。得たいの知れない相手から革ケースを手渡される船長、相手は長身で黒づくめで、とんがり帽子をかぶっている)
船長「『やり直しのグラス』だ。」
船長が船員に、先ほどから手に持っている唐草の紋様の入った高価なグラスをみせる。
先ほど飲み干したはずのグラスには、飲む前の酒が満たされている
ゴクン!!
また、飲み干した。
船長「・・・呑みすぎたなー、と、後悔したとする、」
船員にはおかまいなしに、勝手に独り言のように呟く船長
船長「そんなときは、リングをこう、擦(こす)りながら、」
キューッ
グラスの淵を擦る
船長「遡上・・・。」「と、つぶやく。」
船長からは船員や周囲がブレて見える
ブブンッ
船員目線、船長がブレて見えている
スススス
再び酒が戻る
船長「ほら、酒が。」
グラスを見せる。
船長「酒がもと通りだ!」
たしかに、飲み干したはずなのにグラスに酒がもどっている
船員A「なんなんすか、嬉しそうに」
船員Aが笑う船長に気づいて質問をしに寄ってくる
船長「おまえ、その質問5度目」
船員A「?」
船長「ワハハハハ」
亀が足元からのっそりのっそり歩み去っていく。
積荷を点検してまわっていたメガネをかけた船員Bが、
船長の高笑いに気づいて加わってきた。
時間遡上グラスについて談義をしている船員たち
船員B「ほぇー、すごいっすね!」
「つまり、酒が飲み放題?!」
「でもそれって・・・」
メガネの船員Bは船員Aよりは少しは頭がまわるのだろう、
遡上グラスの仕組みの裏を考えている面持ちだ
船員A「”遡上”と唱えると時間が戻って、」
「また呑んで、また”遡上”ってゆったら、」
「時間が戻ってって、それやったら・・・、」
「永遠に、酒が呑める!!」
船員Aは相変わらず自分の得できることにしか思いが至らない
船長「いや、それがな。」
「遡上ってつぶやいたら、呑む前に戻ってるからさ」
「飲んだ記憶は、な〜んとなくあるんだけど・・・」
船長一服置いて真剣に言う
船長「なんとなくなんだよ」
船員AとB「・・・・」
(構図:船長のアップの顔を真ん中に、左右に興味深々のふたりの船員の顔のアップ)
船長「”遡上”と唱えて時間を数秒遡った俺は、」
「今度はこの酒を呑まなかった。」
グラスの酒をくるくるしながら
船長「酒は”呑まなかった”ことになったわけで。」
「しばらくしたら、
あれ?呑んでないんじゃねって
なってくるんだ、これが。」
船員Aを見ながら
船長「おまえに俺、説明したの何回目だ?」
船員A「え?初めてですよ。」
船長「ほんとうにそうか?」
船員A「え・・・・あれ・・・?」
船員の視界がブレてぼやける
ブブブブ
船員A「あれれ・・・、」
「そうえばさっき船長に「それ2度目だ」って言われた気が・・・、」
「「おまえ5度目だぞ」って言われた気も、
あれ?どっちだっけ・・・」
船員Aが焦り出す
船員A「あれェ・・・?!お、おかしいな、
さっきは初めてだと思ったのに・・・、
こんな記憶なかったのに」
めちゃくちゃ焦り出す船員A
船長「呑んだ自分と呑まなかった自分が、
結局あとでくっついて、
呑んでて呑んでない自分になるんだな。」
「おまえは、聞いてなかった自分と
聞いてた自分がくっついたんだな。」
「酒は、飲まれていて飲まれてもない、不思議な液体に・・・」
船員A「な、なんか気持ち悪くなってきた・・・」
頭がついていかず具合が悪くなってきた船員A
船員A「さっきからの船長とした会話の記憶があやふやで、
なんだか頭がおかしくなりそう・・・」
船員B「船長が「遡上」と唱えたところまで
時間が経過したところで、
「呑んだ」時間軸と
「呑まない」時間軸が
統合したんすね」
合点がいったという船員B
船員B「喋った記憶も混ざってるから、ニーチェさんの記憶もぐっちゃぐっちゃになってるんだ」
船長「うーん・・・」
船員A「び、微妙なグラスっすね」
なんか得していない気分になってきてがっかりな二人
船員B「僕は二人の遡上の間も気づかずに、荷物を見てまわってたから違和感がないんすね」
「・・・ブツブツ・・・つまり、僕は二度同じことをしてるのか」
頭の良さそうな船員Bが、嬉しそうにまとめる。
この珍しいグラスを良く見ようと、メガネに手をあてながら興味深々
船長「時間遡上って・・・、『やり直しのグラス』って・・・、そういうことなのか」
船員A「知らないで買ったんですか?!」
お調子者の船員Aもさすがの呆れ気味
船員A「「あ、この一杯を呑みすぎた!」って
いう時に使うって感じすかね・・・」
「なんか、もうマジ微妙っすね!」
金を払ったわけでもない船員Aが、おもいっきりガッカリモードに入っている
船長「うーん、なんか嬉しさも”半分”になってきたなあ」
船員B「どのくらい遡れるんです?時間」
もうつまんなくなってきて何でそんなこと聞くんだと言う顔で船長が答える
船長「数秒かな」
船員A「ますます微妙っすね!」
がっかりしながら船長、遡上グラスをうつろに見つめ、
虚しくグラスの縁をこすり「遡上」と言いかけた時、
遠くの空に何か光るものを見つける
船長「ん?」
キラッ!
彼方に何かが光った
船長A「なんだ?!」
船員B「鳥?」
みるみる間に近づいてくる天使ガチギレ
ギューン!!!
ダーン!!
甲板デッキに激突するように着地してきたガチギレ
船員たち「うわーっ!!」「ヒィっ!」
船が衝撃で揺れ、高価な調度品が落ちる
ガラガラガラ
船長の足元の床に『やり直しのグラス』がコロコロと転がる
グラスは怪しい妖気を漂わせている。
(中途半端に起動している状態のグラスが微妙に振動しブレ続けている)
亀は相変わらず、その場からノタノタと歩み去っていく
船長「な、なんだ貴様!」
突然の来訪者に気色ばむ船長と船員たち
ビビる船員達の前に、険しい形相で仁王立ちのガチギレ
顔には先ほどの攻防での傷や汗が見える
腕に一際輝く金色の腕章を目に留めた船員が言う
船員A「しゅ、守護天使・・・?!」
船長の横にいた船員が進言する
船員B「・・・あの腕章、守護分隊です。六区の奴かと」
シュウシュウシュウ
ガチギレの全身からは湯気のようなものが立ち上っている、
弓に巻きついている小さな龍が、船員たちへ怒りの感情を向けている
龍「シャアアアアア」
船長「守護分隊が、な、何のようだ!積荷の検疫ならさっきの港で」
ガチギレ「すぐに船を捨てろ!」
「この船は堕とされたッ、」
「命が惜しくば、直ちに下船退避しろッ!」
取り合うつもりはないとばかりに、
強い口調でガチギレが言い放つ
ガチギレ「お前たちは一度死にかけ、これは二度目だ!」
龍がつけ加えるように言う
龍「ラッキーだったな」「再臨と思え」
シュウシュウシュウ
憤るガチギレの顔から全身にかけて、痣のようなものが浮かんでいることに、ようやく船員たちが気付き怖気付く
船員B「そ、遡上痕・・・」
ナレーション「遡上痕とは、時間遡上を繰り返した際に浮き出る外傷である。(重度となれば生命に危険を及ぼすこととなる。)」
周囲の光景がブレだす
ブブブブブブブブブ
ガチギレ「刻が混じわり始めた」
事象の統合が始まった周囲を見回すガチギレ
船員B「トビヲに襲われて墜落した時間軸と・・・」
船員Bが一生懸命に状況を理解しようと考えている
船員B「・・・今、逃げろと言われている時間軸、」
異なる時間軸の光景がブレて重なってくる
船員B「それが重なると・・・」
尋常な事ではないことだけは理解した船長が、顔に脂汗を滲ませ、
鼻の穴を大きく膨らませている、興奮とも緊張ともつかない表情
船長が決断して叫ぶ
船長「全員、退避だーッ!」
船員Aは、頭をかかえながら、一目散にバタバタと逃げる準備をしだす。
他の船員たちも「退避、退避」と叫びながら逃げ出す準備をする
ガチギレの弓にいる龍がそれを眺めながらボソリと呟く
龍「恐怖と混乱は自分たちで乗り越えろ」
可笑しくもあり愚かな人間たちだと多少嘲笑ってもいるような、そんな表情だ。
ガチギレはトビヲの来る方角をキッと睨みつけている
ダンッ!!
飛行船から勢いよく飛び立つガチギレ
迫りくる巨大なトビヲ2体の方へものすごいスピードで向かう
ブレた風景。
別の時間軸での墜落していく商船とそれを襲うトビヲが重なり出す
船員A「ひ、ひぃいいい!!」
船員B「あ、頭、喰われかかった記憶がっ・・・」
「さっき喰われかかったのかっ」
船長「考えるな、今、目の前のことだけに、集中しろ!」
何をすればいいかだけは常に掴んでいる船長のようだ、
いちおうこの船員たちのリーダーを長くやってきたのだろう、そんな振る舞いだ
ギュイイイイイン!
ガチギレが2体の大トビヲの真っ只中へ突撃していく
ガチギレの周囲も統合により重なってきているはずだが微塵のブレもない、
ものすごい集中力
ビシュッ!!
バシュッ!
矢を1発ずつ2匹の大トビヲの目玉へ放ち、彼らの気をひいた。
自らを囮に船からトビヲを引き離す、
怒った大きなトビヲ2体は螺旋を描くように高速でガチギレを追う
宙返りでそれをかわしながら、船員たちが退艦する時間を稼いでいる。
片手で擲弾のようなものを素早く矢の先にねじ込むガチギレ
クリック
クリック
擲弾を付けた矢を華麗に撃つ姿勢をとるガチギレ
商船から救命ボート(ミニ飛行ボート)に乗って離脱した船員達が、
緊張しながら遠くからその光景を見ている
船員たち「あいつ、・・・」
(構図:ガチギレ正面からのアップ、弓に龍が絡みついている、龍も目標をしっかりと補足中)
龍が言う
龍「あのデッキのなにかだ」
ガチギレ(コク・・・)
ガチギレ、コクッと軽くうなずき、息を吸い込み船のデッキに照準を合わせる
船員たち「あいつ・・・、俺たちの船を!」
バシュッ!!
ガチギレが擲弾付きの矢を船の方へ向かって放った
弾かれたように踵をかえし矢の方角へ向かうトビヲ
ドンッ!
矢が炸裂し、船のデッキ付近が大きく吹き飛んだ
船員たち「う、打ちやがった!」「俺たちの船をっ?!」「な、何しやがるっ!!」
ドドーン!!
爆発する船
トビヲ「!!」
なにかに反応するトビヲ
散り散りバラバラになる高価な品々
(構図:落下物を下から上を見上げるようなカット。手前に落ちてくる『やり直しのグラス』、グラスはまだブレ続けている。周りに高価な酒瓶や調度品や宝石などの品々。その向こうに吹き飛ばされた船。周囲には積荷が舞っている。右上あたりに小さくガチギレとトビヲ。左側に逃げ出した船員たちのボートが小さく見える)
龍「あそこだ!」
龍目線、中央が大きく見える鷹のような目だ。
散乱する落下物の中に、キラキラ光る物体が見える
ガチギレ「光ってる」
「あれは・・・なに?」
龍「なんでもいいっ」
「海へ墜とせ!」
ガチギレの一瞬の迷いを無駄だというように、決然と言い放つ龍
ガチギレ「っだね」
くるりんと弓を構える
龍「風速4、右からだ」
龍が目標までの風の流れを読みガチギレにアドバイスする
(構図:中央に光る物体、少し右に鏃の先。右よりに上方へ照準を合わせる様子)
ビシュッ!!!
ガチギレがタイミングを測りつつ矢を放った
(構図:擲弾付き鏃が手前、向こうにガチギレ。周囲に集中線)
ドッーン!
キラリ光った物体の少し上方で擲弾が炸裂した。
光る物体は爆風で下方へ更に吹き飛んでいく。
それを追って狂ったように、爆炎の中へ飛び込んでいくトビヲ
なおも擲弾付きの矢を放つガチギレ
ドン!
ドン!
ドン!
爆炎が縦に並ぶ
それを追いかけるように、物凄いスピードで降下していくトビヲ2体
2体のトビヲは螺旋を描きながら、爆炎を追いかけ落下していく
ギャアアアオアオオオオオオアッ!!
海面が近づいてくる
海へ大きな飛沫を上げて突入するトビヲ
ドッババーン!!
まるで海で大きな爆弾でも弾けたのかというような、巨大な水柱が上がる
ゴボッ・・
ゴボゴボゴボゴボ
ギャアギャアギャアギャア
溺れながら沈んでいく2匹の大きいトビヲ、
巨体の羽は海面への衝突で折れ、衝撃で身体の一部も折れている。
再度飛び立つことはできず、体表についている幼体もろとも海へ沈んでいく。
幼体は飛ぶ力が弱いのだろう、満足に飛び続けることができず、叫びながら海面へ墜落し溺れ沈んでいく
船員たち「・・・・。」
この顛末を、ただ茫然と眺めるしかない船員たち。
船員Aなどは怖いことは苦手なようで、もう正直しょんべんちびりそうな状態だ
ガチギレと龍は、なんとかトビヲが街へ到達するという惨劇を回避した。
安堵で疲れが出てきた
ガチギレ「ふぅ・・・。」
龍「やれやれ、だったな」
(構図:引きのショットで。海の藻屑となったトビヲの群れ。船員たちの救命ボート。パラパラと堕ちてくる飛行船の残骸。ガチギレたち。遥か遠くに他の守護分隊の者たちが駆けつけてくるのが見える。)
ザザーン、ザザーン
海の音